じゃあ、いったいどうしてどうやって12支に植物から動物の名前が付けられるようになったんだろう‥‥。それには、こんな話がある。
むかしむかし、天上の玉皇大帝という人が、12種類の動物を利用して年を表そうと考えた。ところがこの大帝、その順番をどうするかで頭を抱えてしまった。
「私は犬が好きだから、犬を一番最初にしようか。いや猿が最初というのもいいな。いや待てよ、鳥も捨てがたいものがあるし。えーい。それならいっそ競技で決めちまえ!」
というわけで動物たちに、競技によって年を決めるというお触れが出された。
牛は「おらは歩くのが遅いもんで、一足早く出かけるべ」まだ暗いのに出発した。牛小屋の天井で見ていたネズミは、「ちょっとあなたの背中に乗せてもらえませんでしょうか」
「あぁ、いいっすよ」
ところが、牛の背中に乗ったネズミはゴール前で牛の背中から飛び降り、ちょろちょろっと走って、ズル賢いネズミが1番。人のいいウシは2番ってことになっちゃったんだって。
次に現れたリュウとトラは、これは予想以上のデットヒート。抜きつ抜かれつ、両者まったく譲らない。
おっとどうした、いきなりウサギが競争に乱入して来たぞ。これはたいへんだ。今、ウサギがリュウの進路を、妨害した模様。おっーと、そうこうしている間にトラがゴール。続いてなんということだ意外にもウサギがゴール。
それで、トラが3番。ウサギが4番と決まってしまった。
焦ったリュウが、何がなんでも5番にならなくては、と急いでいるとそこへヘビがやって来た。でもリュウは、ヘビごときに5番を明け渡すことはできないというもの。
「ちょっとお前さ、おれに似ているなんて思ってるんじゃないだろうね。お前なんて、角も無いし、よくそんな姿で平気でいられるね。おれだったら恥ずかしくて人前には出られないけどな」
威厳ある姿のリュウにこう言われた日にゃ、ヘビとしては立つ瀬がない。仕方ないからヘビは頭を隠すようにしてリュウの後ろについていった。
これでリュウが5番、ヘビが6番。
少し遅れてウマがやって来たので7番。
続いてサルとヒツジが、ほぼ同時に到着。
これは審査員の判定によってヒツジが8番、サルが9番に決定。
その後にちょっとした問題が起きた。トリとイヌとが同時に到着してしまったわけ。審査員たちがどうしようかと考えていると、トリが大声で直訴を始めた。
「審査員の皆様。どうかお聞きください。私は毎朝早くから、それも休むことなく大声で、町の人々を起こすという務めをしております。のどがかれることがあっても、一日たりとも欠かしたことはございません。でもこのイヌはどうでしょう。主人の居ない家を守っているだけではありませんか。どうしてこの私がイヌより先になれないということがありましょうか!」
言われてみればもっともな話だということで、トリが10番、イヌが11番ということになってしまった。
最後に到着したイノシシが12番目、これでめでたく、ネズミからイノシシまでの順番が決まりましたとさ。
これが中国に伝わる12支のお話。
 
このお話からすると、子年生まれの人は、ちょっとズル賢いところがありそうだし、巳年生まれの人は恥ずかしがり屋で、酉年の人は主張が強いって気がしますが、どうでしょうね。
ところで12支には、どうしてネコがいないのでしょうか?ネコなんてすごくポピュラーな動物なのに。これは、ズル賢いネズミがネコに競争がいつあるのかを聞かれたとき、日ごろいじめられている仕返しをしようと思ったのか、ウソの日程を教えたからなのであった。だからネコは競争に参加することができなかったというわけ。
 
それとは知らず、ネコは翌朝早く目を覚まし、館を目指して一目散に走った。一番乗りを確信して門内に入ったが、天帝から「十二支を定める行事は昨日終わったのじゃ。顔を洗って出直してこい」と言われ、がっくりして帰って行った。
それにしても、「ネズミの奴め」と、ネコは騙したネズミを恨み、以後捕まえるようになったという。また、ネコが手で顔を洗うような仕草をする習性も、天帝にこの日より命じられたためであるそうな。
う〜ん。子年生まれは、ますますズル賢くて油断できないやつって感じだな。
ベトナムの12支には、ウサギと猫が入れ替わっている。
そうそう、もう一つお経に関するネコとネズミの話を・・・
有史以前の昔より、ネズミには悩まされたようで、静岡市の登呂遺跡(弥生時代後期)の高床式倉庫の床下直下の柱などに円盤状の枝をネズミ返しの仕掛けとして貼り付けられている。そこで、日本にいなかったネコを中国より取り入ることになったのであった。中国の昔のネコはネズミをエサにしていたので、当初の目的は中国から日本へ船で運ばれる経本などが、ネズミにかじられないようにするためであった。
お経が日本に伝わることにネコが大きな役割を果たしたのだが、インドでは魔物とされ、そのために釈迦が亡くなったときネコは駆け付けなかったとも言われている。
 
また仏典には、このような話も載っている。
 
釈迦が病に倒れ、いよいよ臨終という時、動物たちが必配して見舞いに集まって来た。ネズミは釈迦の薬を取りに行ったが、帰りにネコに邪魔されたため薬が間に合わなかったそうな。薬を取りに行ったネズミは12支の一番目、ネコは12支に入れなかったという。
また、釈迦の病気をしらされたのに燕は化粧に時間がかかり、釈迦の臨終に間に合わなかった。そのため12支に入れてもらえず、また穀物を食べる事も許されないという。
 
とは言っても、これは言い伝えであって、実際のところは植物の成長の周期によって名前を付けたように、動物の場合も「一年中で、もっともネズミが繁殖する時期だから『子』としよう」てな具合に、一年を通して動物の特徴が最もよく表れるものを取って付けたみたい。
 
月の満ち欠けは、まず植物の名前で表されて、やがて動物の名前が付いて現在に至っているようだ。