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★五台山の中心寺院顕通寺

顕通寺
 国には古来から「天下名山僧占多」(天下の名山には、僧侶が多い)ということわざがある。名山とはすなわち五台山、四川省の峨眉山(がびさん)、浙江省の普陀山(ふださん)、安徽省の九華山の四大名山をいう。その中で最も歴史が古く、尊ばれてきたのが五台山である。
  伝説によれば、後漢の明帝の時代二人のインド僧、迦葉摩騰(かしょうまとう)と竺法蘭(じくほうらん)が都・洛陽に白馬寺を建立、さらに五台山に参拝した折、五台山(清涼山と呼ばれていた)に仏教をあつく信仰したインドの王・アショカ王の舎利塔が建っているのを知り、この清涼山こそ、かの文殊菩薩が修行を行い、仏法を説いた聖地であることを悟ったそうだ。洛陽に戻った二人の僧は、清涼山に寺院を建立するよう奏上し、明帝はただちにこれを許したそうである。
  こうして五台山に最初に建てられた寺院が顕通寺である。

  創建は、後漢の永平年間(紀元五八〜七五年)といわれる。

 身は、周囲の山の形が釈迦牟尼の修業した霊鷲山(りょうじゅせん)に似ているのにちなみ、大孚霊鷲寺(だいふりょうじ)と名づけられ(「大孚」とは広大な信仰の意味)北魏の孝文帝が拡張し、唐の則天武后が大華厳寺と改めさせ、さらに、明の太祖が修築を重ね「大顕通寺」の額を賜った中国最古の寺の一つで、敦煌の壁画にもその銘は描かれている。
 懐鎮の中央に位置し、境内の面積は八ヘクタール、七つの主な建物「観音殿、文殊殿、大雄宝殿、無量殿(殿内に梁がないため無梁殿ともいわれる)、千鉢文殊殿、銅殿、後高殿」はすべて国の重要文物保護単位(国宝級)に指定されている。各種の建物はあわせて四百余間の広さをもち、その中で特色あるのは、建物すべて50トンの銅で鋳造した銅殿で、殿内の四壁に一万尊の鋳造小仏像がある。
 高殿には、五台山の文物、美術作品や五台山の諸寺の玉璽(ぎょくじ)大印が飾られている。
 武天皇は東大寺の落成にあたり南大門に「大華厳寺」(現顕通寺)の名額を掲げ、大仏殿の2階の間に「恒説華厳」の霊額をかけたのは、顕通寺が仏教の中心であるように、この東大寺が日本仏教の中心となるように、という意味があったに違いない。
 仁の『入唐求法巡礼行記』によると、840年の5月16日から7月1日まで当時十二院からなる大華厳寺(顕通寺)に滞在し、志遠や文鑑らのもとで天台教学を学び、教典37巻を書写した。

大白塔
 さ56.4メートル。
五台山のシンボルである
大白塔(釈迦牟尼舎利塔)と顕通寺外景


菩薩頂
 通寺境内から菩薩頂(真容)を望む
古くから文殊菩薩はこの菩薩頂に住み、真の姿を見せたといわれたことから真容院とも呼ばれる。創建は471〜499年であるが、現在の建物はすべて清代のものである。

 体をおし厳寒の12月にやってきた天台宗の僧、成尋(じょうじん・7歳で大雲寺に入り阿闍梨になる)や東大寺の僧、然(ちょうねん・法済大師とも号される)は「大華厳寺真容菩薩」「大華厳寺菩薩真容」と記している。

菩薩頂
本人僧慧萼(えがく)は、二回目の五台山巡礼(858年)において、山頂(菩薩頂と思われる)で観世音像を得た。日本に帰国しようとした際、海路補陀山付近で船が動こうとしなかった。これは観世音像がこの地にとどまりたいとの心を示すものであろうと推しはかって、この地に住む張氏宅に観世音像を安置した。のちに、一寺を創建して補陀洛山(ふだらくせん)寺と称した。よって、その観世音は「不肯去観世音」(行かず観世音院の意)とも称されている。これが南海の禅刹として名高い普済寺の起源である。後世、慧萼を開山とするようになった。
 蔵法師になった霊仙、五台山入山で中国四大仏教名山の一つ、普陀山をつくった慧萼、日本が誇る二人を偲びながら五台山を旅してみるっていうのも、いいんじゃない?

魯智深
 説『水滸伝』に書かれている大力無双の破戒僧魯智深(あだ名は花和尚・「花」は刺青を指し、全身に刺青があったことであだ名の由来となった)が酔っぱらって、大暴れしたのがこの菩薩頂の山門である。

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